経理財務による承認・稟議・チェックの意味

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経理財務の機能として「内部統制」があることを以前書きました

内部統制とは経営におけるリスク管理機能で、その一端を担うわけです。

なぜ、ファイナンスがその一端を担うのか基本的な考え方をまとめています。

 

法的要請

最低限の要求事項として、会社法、J-SOXへの対応が理由の一つとしてあります。会社法は「内部統制システム」を取締役がしっかりとつくることを求めています。正確には「取締役の職務の執行が法令および定款に適合することを確保するための体制」(会社法362条4項6号)と条文に書かれています。

難しいことは世の中にあふれている情報に譲ります・・・

平たく言えば「会社がルールを守ってしっかり機能するように取締役は会社を管理しなさい」ということになります。個社名はここでは上げませんが、当時(細則を定める会社法施行規則に2006年に定められた)日本企業の不正が相次ぎ問題視されていたことが背景にあります。「しっかり機能するように」については、不正や粉飾が起きないよう、規程などのルールをつくって、そのルールどおりに業務を運用する、という期待が込められています。

一方でJ-SOX金融商品取引法からの要請事項なので、上場会社にのみ適用される要件になります。非上場は対象外。所帯の小さいベンチャー企業でも上場する場合は必要になりますので結構大変です。こちらは「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制」を上場企業は作りなさいね、という要望になります。ちゃんとやってないと監査意見が不適正になったり、上場廃止株主代表訴訟につながるので注意が必要です。

内容としては、「会社法」は会社の行為全般に及んでいるのに対して、「J-SOX」は正しい財務諸表を作るのに関係する業務に対象が少し限定されるところです。まぁどこかで不正が起これば、財務諸表の間違いにつながりますので、実務的には線引きは結構微妙ではあります。

 

なぜ経理財務が承認やチェックをするのか?

会社として内部統制が必要なのはわかったけど、なぜ経理財務が経理伝票や銀行残高や支払だけでなくいろいろなことを承認したりチェックしなくてはならないのでしょう。ここで、その会社における経理財務の立ち位置が問われます。すなわち:

経理財務に割く人員は最低限。チェックはミニマムしかやりません。お金が出ていく支払のチェックだけやります。

 OR

経理財務は企業目標(財務指標含む)達成のために必要なPDCAを廻すことまでやります。すなわち、支払のみでなく、価格決定や値引き、人員採用、予算案、各種契約、投資、開発等々。

いずれのスタンスをとるかでやることが変わります。がこのブログでは②の役割を前提としているので、このスタンスを取る場合について深堀してみます。

ここでもう一つの視点として、会社としての組織運営方針または目指したいカルチャーとの絡みもあります。大きくは何れかに分類されますので、相性の良いかかわり方をするのが良いかと思います。

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経理財務が承認やチェックをする意味

承認や稟議において、経理財務に求めらている機能は何でしょうか。そもそも稟議とは「どの部署のだれが、どこの会社のだれに、何を、いくらで、買ったり依頼したり契約したりするのか」を承認する行為になります。

ここで、事業部門側での承認ルートに経理財務が入る場合、何を実現しなくてはならないのでしょうか。ここでいう承認ルートは、情報共有&追認ではなくて、がっつり審議承認を行う場合を考えます。

  • 法的要請で書きましたが、会社のルール通りに決裁が行われていて、内部統制が機能していることを確認する。内部統制システムは取締役に求められるものですが、J-SOXと相まって、経理財務にそこを期待する風潮がありますね。多くの会社は承認フローをまわすシステムを入れているので、そもそも間違いが起きない仕組みになっていればベストです。
  • J-SOXとも絡みますが、正しい財務諸表が作成できるように、申請されている内容や金額が正しいかを確認する機能も求められます。内容は特に費用や投資の場合において、使用する勘定科目が正しく選択されているか?を確認することが多いです。
  • 経営視点で、「その投資は必要か?」や「もっと安くできないのか?」「あちらの部署で使っているやつを流用できないのか?」といった組織の生産性や利益率を上げるための観点で、チェックする機能も期待されます。
  • 最後に不正防止の観点です。違う部署である経理財務が客観的にその取引をチェックすることで、不正を未然に防げる場合があります。ただし、事業部門側の申請者と承認者が結託している場合、よほどの経験値か感性がないと不正を発見するのは極めて困難です。

 

がっつり入っていくなら経理財務のレポートラインはトップ、CFO直轄であるべき

前述の不正防止の観点と特に強い関係性があるのですが、経理財務にちゃんとしたチェック機能を持たせるためには、そのレポートラインはトップであるCEOまたはその下のCFOなど、事業部門側とは独立した部門であることが肝要です。

この心理的安全性というか、チャレンジしやすい環境をつくらないと、中々口出しするのは難しくなってしまうからです。

 

承認や稟議、チェック業務は経理財務のミドル人材の育成に最適です!

以上、経理財務による承認・稟議・チェックの意味について書きましたが、実際のチェック作業は20代後半~30代半ばくらいまでの経理財務の人材にはぜひやってみて欲しい経験です。

事業部門側にアタックしたり、怒ったりするには、それ相応の合理性と勉強が必要ですし、コミュニケーションの仕方も経験になります。

またそのやりとりを通じて、ビジネス理解と事業部門側の人との人間関係も構築できる。さらに数字の感度(いくらまで値引きすると他より値引き率が高い、など)も経験値から上がって行きますので、特にマネジメント層へのキャリア志向がある人には最適な修行場と言えます。

 

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