人材育成において、誰に、どう時間をかけるべきか ー 全員底上げしたい場合

 

人材育成をめぐる環境

ファイナンス組織だけには限りませんが、「人を育てる」は重要課題でありつつも多くの企業(超大手を除く)ではローテーションやトレーニングなど体系的に行うのが難しい場面に遭遇すると思います。

少子高齢化、働き手の多様化によって経理財務の若手人材もどちらかというと売り手市場ということも手伝って、常に欠員を抱えて組織運営しているファイナンス部門の管理監督者は多いと思います。

採用活動をしていても、ジョブホッパー的な若手(20代から30代)がとても多い。その人個人の問題もあるかもしれませんが、組織が将来が見える育成プランやプロセスを提供できていないことも背景にありそうです。

よって、今いる人材の「個の力」を上げていく(サッカーみたいですが)ことは非常に重要であり、また自動化や外注化でより高いスキルが求められる世の中を見据えて、人材を育成しなくてはなりません。一方で、高いスキルを身に着けるためのハードワークが難しい世の中になっているのも事実です。自分の世代は「人の倍働けば」「人の倍の力が付く」、と努力してきたのでジェネレーションギャップは感じずにはいられませんが・・・

かくいう私は、ONE TEAMで全員の力の底上げが必要だと考えています。人材不足と働き方の多様化が進む中で継続してチームとして成果を上げていくためには、一人ひとりの「個の力」が大事だから。あと、チーム間で業務をカバーしあえるような人間関係をつくるためにも、いわゆる「落ちこぼれ」的人材を輩出してしまうのは避けないといけないから。

でも、うまくいかないことが多いですし、忙しくなってくると、一人ひとりかけられる時間は少なくなる・・・

 

 

誰を育てるために自分の時間を投資するべきか

 

SkillとWillのマトリックス表をベースに考えると、果たしてどの人材を育成することに時間を割くべきでしょうか。日本語だとSkillはスキル、Willはやる気と訳されることが多いですが、

自分の中で、Skillは現在の職務を実行する上でのハードスキルと経験値と捉えます。

Willは「やる気」というよりも私は「成長意欲」としてとらえています。これは人間的な成長、スキルの向上、または昇進意欲が高いか低いか。どれが目的であってもこれへの意欲があれば自発的に学びたい、経験したいという行動に表れるからです。

これに対して「承認欲求が高い人」をどう分類するか?は悩ましいところです。誰かに貢献したい、認められたいという思いがあれば、頑張れるかもしれませんが、その場合人間関係を大事にしすぎて、人と仲良くなるとか一緒に頑張る感とかいったことがモチベーションになります。やる気自体はあるので、それを実現するために何を成長させなくてはならないのか?という方向に持っていけることができますから、含めても良いのかなと思います。

2.に分類される「成長意欲」も「スキル」も高い人をより成長させるには、「Delegate」すなわち権限や業務範囲をどんどん持たせることにつきます。こういった人材に対しては、ビジョンや戦略の枠だけ示して、その枠から外れたときだけ軌道修正すればよい。経験上も間違いなくそうです。個人的にはある意味一番楽ができる部下になります。こういった人材は優秀であることが多く、枠を狭めるほどやる気が出なくなるので、マイクロマネジメントしたい、強烈に自己のリーダーシップで組織をマネジメントしたい上司とはアンマッチになりがちです。

4.に分類される「高いスキル」を持っているが、「成長意欲」が低い人のマネジメントは難しいです。その人の何のボタンを押せば「成長意欲」が高まるのか。これを探し当てるには人物像をしっかり理解しつつ、当人がどういったキャリアに進んで行きたいのかを把握しておく必要があります。「どうなりたいかわからない」といった人もいますので、正直対応が難しい面があります。個人的には一番取り扱いが難しい人材です。なぜなら「成長意欲」を外からの力で導き出すのは相当に難しい。けど、スキルは高いのでどんどん上に上がって欲しい、と上司の立場からは思うからでしょうか。

全員の力を底上げしたい場合、部下がどこに分類されるかで、コーチング方法を変えて力を押し上げていくことが考えられます。ですが、3.に分類される、「成長意欲」も「スキル」も低い人は、指示を出したところでそれに中々応えられない人も多いですからついつい時間を一番使ってしまいがちですので、そこは注意したいところです。