数字をしっかりつかむ:コロナ禍の大学の休退学者5千人報道について

このYahooニュース。

「大変~」と一瞬思いますが。

news.yahoo.co.jp

 

コメントされている方がいて、秀逸だと思いました。

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ファイナンスの人間であれば、健全なる懐疑心を持ってこのように数字を見たいものです。すなわち分析とは基本的に何かと比較することで「すごい」とか「大変だ」とか「多いとか少ないとか」といえるわけなので。

 

「5千人もコロナのせいで休学・退学者がいるのか!すごい人数だ!大変だ!」

 

と、思いがちですが、

 

前述の方が指摘されているとおり

実は前年度より減っていると・・・。

 

 

文科省公表資料ではこのような見せ方をしています。

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確かによく見ると、同じ4月~10月の期間比較ではR1(令和元年)の方がR2(令和2年:今年)より中退学者も休学者も少ないことがわかります。

 

なお、絶対値だけではなくて、学生数に占める割合も下がっていますので、

やはり前年度より悪化しているということはないことが見て取れます。

(データが正しい前提ですが)

 

「なんだ、ほんとに記事はただ煽ってるだけじゃん」

 

とも言えるのですが、もう一歩深堀してみたいと思います。

すなわち要因別に見た時の割合。これをR2とR1で比較してみます。

 

すると:

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割合が大きく増加しているのが、「経済的困窮」 と「意欲低下」であることがわかります。

 

次に人数で規模感を見ると:

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コロナ禍で、海外留学や企業がしにくい環境が生まれたためか、「就職・企業」も大きく減少していることがわかります。「その他」が大きすぎるのはちょっとなぞですが。。。

 

したがって、「経済的困窮」 を原因とする休退学者の割合(数ではない、割合)が増加しているため、学生救済策による課題解決は必要と考えられます。絶対数は減ってますが。

加えて、「就職・企業」できる環境が減少していることも課題といえるでしょう。

 

個人的に一番気になるのは「意欲低下」なる休退学者の割合が増えていることです。

前述の文科省の公表資料には専門学校に関する同様の調査結果があるのですが、20%超がこの「意欲低下」による休退学となっている。

このあたりに、経済的な救済策以上に大きな課題が隠れているように見えます。。。