FP&Aが勉強すべき本 :企業参謀(大前研一)

FP&Aに限らず、参謀的、軍師的立場の人であれば本書については読んでおくことを強くお勧めします。

 

なお、本書の大1刷は1985年10月発行です。

大前研一氏は1943年生まれなので42歳のときに本書を上梓されています。(今の私と同じ歳だ・・・)は余談で何よりも、1984年当時から既にこのレベルの話をされているのに大いに驚きます。

 

このときから、2020年現在における各企業の中期経営戦略計画が、進歩していると思えないのが現状です。自分が井の中の蛙かもしれませんが、それなりに多用な企業を外部からも内部からも見てきているので、ちょっとショックでした。この領域に関しては前に進んでいる感が全然ない・・・

 

オフィスワークにおいてもテクノロジーがこれだけ活用されてきているので、この分野でもイノベーションを起こして、新しいものを生み出していかないといけないですね。「本質的に大事なことは変わらない」ともいえるかもしれませんが・・・

 

 

因みに本書における中期経営戦略計画の進め方についてその概略を記すと以下の通りです。正直、進歩どころか、このレベルで中計をできていない組織も多いのではないでしょうか。

 

中期経営戦略の立案ステップ(本書より引用。補足追記)

(これ、すごく良いので、体系化してFP&Aの教材にすればよいのに)

  1. 目標値の設定
  2. 基本ケースの確立(いわゆる「いまのままのトレンド」の数字ですね)
  3. コスト削減を実行するケースの算定
  4. 売上増加が実現したケースの算定
  5. 目標値と想定ケース(上記の2+3+4)とのギャップの算定
  6. 代替案の摘出
  7. 代替案の評価、選定
  8. 中期経営戦略の実行計画の策定

 

中計策定のステップに加えて、以下2点もすごく実務的かつ陥りガチで気を付けねばならないポイントが述べられてます。

 

1)どのように優秀な頭脳中枢を集めてみても、10年も15年も先ことになると、戦略というよりは空想といったものに近くなる・・・(中略)・・・3年くらいを中心とした前後1~2年が戦略の良しあしによって業績が大きく左右されうる期間なのである」

 

2)トップの多くはミドルとの間の仕事の分担、やり方というものについて、相互によく吟味されたプロセスを確立していない。これがためトップが空想に走るか、現場に口出しするマイクロマネジメントをし始めるかの2極化が進み、トップも現場も「ブレーン」になるという作業の重複がおこる。

 「ある業績が極端に悪化した会社について、トップから現場の従業員に至るまで面談をしたことがある。このとき驚いたのは、上から下までみな同じ問題、すなわち会社の命運について思い悩んでいたのである。しかも、新入社員までトップ人事の動向や能力について、あたかも毎日の仕事の一環かのように詳細に語ることができたのであった」。

 

特に2つ目は私も思い当たります。色々な組織に所属してきましたがよく見かける光景です。

トップは何をやる、現場は何をやる、を明確にしていくのは結構難しい作業かもしれません。日本企業においてはその役職の職務内容がJob Description(JD)として明文化されていないことを何度も見てきましたが、JDがないことだけが問題ではないように思うからです。。これはもう日本人のメンタリティーなのではないか?(笑)と思い始めています。

だからこそ、トップに対するレスペクトや信頼がうまれるような組織環境をつくっていくことでしか解決できないのではないでしょうか。