「管理会計」の機能がどのように経営に寄与するか

次に、個別の機能について深堀りしていきたい。


まず、「管理会計」の機能は如何に経営に寄与できるのか
管理会計は、企業目標を達成するための一連の活動が、正しく遂行されていることを数値で確認する手段であり、経営のPDCAを実践する機能を有している。PDCAのそれぞれの段階で期待される機能は以下の通りである。

Plan:組織の目的と目標を作成する。KPIなど含めた予算や予測値。その目標を組織全体に浸透させるとともに、実行に向けてステークホルダーをしっかりと巻き込んでいく機能が期待される。従って、管理会計を担う者には創造性や分析力だけでは不十分で、熱意をもって組織目標をコミュニケーションできる力が求められる。例えば「予算」には、通常経営方針が組み込まれているため、その方針や内容を管理会計部門が各部門に説明する際には、経営者のメッセージを代弁して現場に広げる役割であることを自覚しておかなくてはならない。

Do:目的と目標から事業活動が反れていないかチェックする。また、事業側からは人事的なレポートラインから独立しているので、不正や「ズル」がないよう、正しい行動が行われるよう組織を正す役割を求められる。ビジネスパートナーとして事業部門から信頼されている状態であれば、何かを実行するときに管理会計担当者には相談が来るはずである。相談が来た際にはファイナンスのプロフェッショナルとして、キャッシュフロー、BS、PL、KPIにどういった影響が及ぶのかビジネスパートナーにインプットすることが必要だ。要は相談することに意義=Valueがなくては信頼を勝ち得ないのである。

Check:目的と目標に対する進捗を確認し、組織全体にシェアする。本機能では、例えば「予算」と「実績」の数字の差異だけを見ていてはNGである。なぜ差が生じたのか、今後はどのように数字が推移するのか、をしっかりと把握するためには現場に足を運んで、Face-to-Faceでステークホルダーと話しをする必要がある。また、景気や市場、業界と競合の動きを常にウォッチしておく必要がある。

Action:目的と目標に対して進捗がしていない場合、進捗させるためのアクションを考え、関連部門とともに実行する。本音のところ経理財務の担当が、具体的なアクションを自らの力のみで提案することは難しく、最もレベルの高い業務になる。例えば、売上が伸びない状態で、売上を伸ばすための施策について、各領域のプロフェッショナルであるマーケターや営業の人間以上に良い案を出せることは稀有だ。だが、戦略的思考や数字を基にした客観的な提言や、KPIの徹底的なモニタリングの主導、組織を活力づけるためのメッセージの発信、などはできる。全く何もできないわけではない。「予算未達、どうするつもりか、営業の責任だ」と突き放すことは容易だが、「組織目標を実現に導く」ためにはそういった評論家は必要ない。事業部門と一体となった「実行者」側としての働き方が求められる。