実践FP&A講座:IT部門が出してきたシステム開発費用の妥当性を検証する。

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ケーススタディ

ファイナンスの担当者で、システム部門から申請された開発案件(投資)について承認をしなければならない。

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こういったケースで、最も検証が困難なのは開発費用になります。開発費用は開発人員の単価x時間です。

単価は2019年時点ではこちらの情報が現場感覚と近しいと思いますので、業務委託や社内開発単価の検証でベンチマークとして利用できます。なお、業務委託は優秀な人だと月単価が100~150万円程度かと思います。 

次に時間ですが、これが一番判断が難しいです。経理財務の人間が、「〇〇システムの開発にそんなに時間がかかるのはおかしい」または「少なすぎる」と突っ込みを入れるのは殆ど不可能でしょう。システム部門経験者やエンジニアのバックグラウンドがあれば別ですが、それらの経験値をもった経理財務の人は殆どいないです。

ちなみにITの担当者は熟練者ほど必ずこの時間(工数)の見積もりにバッファを入れます。日本企業においては現行の業務にあわせるためのシステムのカスタマイズが必ず行われるといっても過言ではありません。ユーザー側のリクエストを聞く必要があるので、どうしても開発工数が読めないのです。そのため、ある程度のバッファは認めておいた方が経理財務としてはコンサバなので無難でしょう。その上で、開発費用に対してリターンがでるか?をチャレンジすればいいわけです。

リターンは投資に対してですので、ROIやROAがよいです。加えて、しっかりPL管理する場合は減価償却費とPLインパクトを見る必要がありますね。

 

検証にあたっては、同じシステムでもカスタマイズや機能のアドオンが異なるので他社とのベンチマークはなかなか困難なため、過去の社内プロジェクトと比較してみるとよいと思います。規模感とコスト感が一致しているかを見るわけです。

なお、純粋な開発部分以外の管理工数は、プロジェクト全体の5%から10%程度が妥当でしょう。

 

 一番困難でありながら、やるべきなのは、投資そのもののを「何のためにやるのか」や「その機能はアドオンが必須か?デフォルトの機能をつかうべきでは?」「コンプライアンス対応というが、本当にどの程度の対応が実務的には必須なのか?」といった確認であるのかもしれません。それでも事業部門が必要なんだ!と言えば必要なのかもしれませんが。

  

投資による効果について、売上拡大や費用削減はロジックがしっかりしているか、を確認するのがせきのやまでしょう。なお、工数削減を謳っている場合は要注意です。〇〇時間作業時間が減る、だけではコスト削減と考えない方が無難です。社員数の削減や時給分(例えば残業してカバーする業務など)が削減されるロジックであれば、効果に含めてよいものと考えます。

 

そして最後に注意すべきは、実際の実績と投資効果の予定を比較検証していくことです。私は多くの組織で、投資実行後の結果をモニタリングしていない状況を経験しています。いったん「Go」してしまうと、ついつい日々の業務に追われて、投資効果の測定が疎かになるから、また開発案件だと完了まで時間を要しますのでその間に責任者や結果を確認すべき人が変わっていることが多いのもその原因でした。

「やりっぱなし」では学びがありませんので、FP&Aの担当であれば結果のモニタリングを確実に実行したいところです。

そういった面では、既に導入済みのシステムの更新や刷新についてはいい機会になります。つい「いま使っているやつの入れ替えだけなんで」という議論になりがちですが、今一度現在の形を見直す意味でも、現在のシステムを入れたときの想定と効果が実際どうであったのかは確認するようにしましょう。