ファイナンスの実務で使える割引率一覧

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ファイナンスの実務では、割引率を使って事業価値の評価や投資金額に係る意思決定をするのですが、では割引率って何%を使えばいいの?は初心者は悩むところだと思います。

ファンドや金融系に勤めていると、日常の実務の中で「この数字を使うのね?」が染みついてくるのですが、事業会社だとそうはいきません。

 

グローバル企業ですと、国や投資区分別に割引率を定めていることがありますが、中小企業だとそうはいきませんので、割引率をどう設定するべきか?はアドバイザーやコンサル頼りになることが多いです。

もちろん頼りになる専門家はいますが、自前でその割引率の妥当性を判断する力はファイナンスであれば持っておきたいところです。

使用する割引率次第で事業価値は大きく変わるので、妥当な割引率を使うことはとても重要です。結局M&Aや資本取引は交渉ごとなので、、という側面もありますが、それはここではおいておきます。

 

では、どんな割引率があるので見ていきましょう!

 

目次

 

1. ベンチャー向けのAICPA “Valuation of Privately Held Company Equity Securities Issued As Compensation” / 米国公認会計士協会のバリュエーションガイド

比較的よく参考にされる割引率のテーブルだと思います。もう何年も使われている情報ですが、まだ見かけます(笑)

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[出典] Accounting and Valuation Guide: Testing Goodwill for Impairment

 

2. 上場企業の割引率(=WACC)参考値

グローバル企業であれば、ニューヨーク証券取引所NYSE MKT、NASDAQに上場している企業の中から代表的な500社であるS&P500のWACCを割引率の参考値として使うこともできます。 

前述のベンチャー企業で使われる割引率より大分低いのがわかります。

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[出典] Forbs

  

日本企業の資本コストの情報も取ることができます。生命保険協会が実施している大手上場企業並びに投資家へのアンケート調査から各社が捉えている資本コストがわかります。

3割超の企業で「資本コストなんて把握してないよ」という実態であることが見えます。資本コストを算出している企業においては、5%~6%台がボリュームゾーンになっていますね。

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[出典] 生命保険協会

 

 

3. 非上場企業の割引率

 非上場企業の場合、流動性がないことから上場企業の割引率からさらに1割~3割ほどディスカウントされることが実務上多いです。

 

参考:

www.plutuscon.jp

 

 

4. 企業実務で実際に使われている割引率

これまで記載してきたのは公にされている情報ですが、企業の内部で実際に使われている割引率の一例も記載します。

10年以上前ですが、私が勤務していた大手US企業の日本法人においては、割引率9.5%という指定がありました。地域ごとに異なる割引率が設定されていましたが、後進国になるとこの割引率がより高い設定がされていた記憶があります。

私がかかわったIT及びベンチャー企業では15~25%という高い割引率を使用していました。まだまだベンチャーステージということで、高めの割引率を設定していましたが、一方で事業価値を高く見せるために、高めに設定している側面があったことも否めません。

その他、中規模の日本企業(非上場)では真面目にWACC計算した結果である8%を割引率として使用していました。

 

 

5. 類似企業から割引率を取得する

上場企業の中には開示書類に割引率を表示している企業があります。

評価したい事業に類似する事業を行っている企業の割引率を引用することも簡易的でお勧めです。

一例ですが、ソニーコカ・コーラの開示事例を集めた資料がJICPAのサイトで見れますのでリンク先を参照ください。

https://jicpa.or.jp/news/information/files/0-11-0-0b-20210311.pdf