我々は「失敗の本質」から学べないのか、コロナ対応に見る共通点はもはや日本人のDNAか・・・(その1)

失敗の本質

 

日本は戦争に負けましたが、その戦時中の記録をつぶさに調査し、その敗戦の本質に迫る「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」(戸部良一他)は、鋭い示唆に富んだ名著と言われます。

 

ビジネスマンであれば、一度は読んだり、もしくは本書のことを伝え聞いたり、はしたことがあるのではないでしょうか。

 

個人的には「空気」で物事が決まる様子を会社組織でも経験してきたので、その危うさをしかと感じるのですが、まさに今の日本国政府によるコロナ対応は同じ「失敗の本質」の轍を踏んでいるように思えてならないです。

 

これはもう日本人が集まるとこのようになってしまう、というもはやDNAに刷り込まれてるんじゃないかと思うレベル。

過去からの学びを、遺産を活かしてほしい。それは起業運営においても同じですので、どういった過ちが繰り返されているのかを本書の引用から比較していきたいと思います。

一点断りを入れておきますが、TVやネットのメディアからの情報だけですと、「政府は何もしていない」かのような印象を持つと思いますが、新型コロナウイルス感染症対策推進室(内閣官房)が開示しているデータやガイダンスを見ると、そんなことはないことがわかります。

ですので、比較して批判するというよりは過去から学べることはないのか?というスタンスの記事になります。

 

文中 『』部分は本書失敗の本質が出典です。

 

目次

 

1.あいまいな戦略目的

いかなる作戦においても、「明確な戦略ないし作戦目的が存在しなければならない。目的のあいまいな作戦は必ず失敗する」というのは、世界の共通言語ですが、この点において戦時中の失敗と、現代のコロナ対策において共通点が観られます。

 

ノモンハン事件 ノモンハン事件において『最高統帥部たる大本営は明確な判断を示さず、結果として関東軍の独断専行を許容する形になった。他方、関東軍出先機関として、彼らの視野と判断の枠組みのなかで作戦をたてることに終始した
コロナ対策 2021年5月における政府の対策基本方針においては、「医療機関への通院、食料・医薬品・生活必需品の買い出し、必要な職場への出勤、屋外での運動や散歩など、生活や健康の維持のために必要なものについては外出の自粛要請の対象外とする」としています。この「生活必需品」の明確な基準が示されず、結果として各自治体や各企業が独断で休業したりしなかったりなどしている。』

 

ミッドウェー海戦日本軍敗退の転換点となったミッドウェー海戦において、その作戦目的は次のようにあいまいな内容であった。『ミッドウェー島を攻略し、ハワイ方面よりする我が本土に対する敵の機動作戦を封止するとともに、攻略時出現することあるべき敵艦隊を撃滅するにあり。』と『前段は、ミッドウェー島攻略を志向し、後段では米艦隊撃滅を目的としている。ニミッツ提督が「二重の目的」と表現したように、目的の二重性すなわちあいまいさがここにもみられるのである。』
コロナ対策菅首相は「オリンピック・パラリンピックは、世界最大の平和の祭典であり、国民の皆さんに勇気と希望を与えるものであるというふうに認識している。感染が拡大する中で、国民の皆さんの間で、東京大会について様々なご意見があることは承知していますが、選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加をすることができるようにするとともに、国民の皆さんの命と健康を守る。これが開催をするにあたっての基本的な政府の考えであります」 オリンピック開催と命を守る、そのバランスを取りに行こうとしているのか、目的の二重性すなわちあいまいさが正にみられる状況です。

 

 

2.短期決戦の戦略思想

甘い戦争終結のシナリオ日本軍の戦略思考は短期的性格が強かった。『最終目標は、太平洋を渡洋してくる敵の艦隊に対して、決戦を挑み一挙に勝敗を決するというのが唯一のシナリオであった。しかし、決戦に勝利したとしてそれで戦争が終結するのか、また万一にも負けた場合にはどうなるのかは真面目に検討されたわけではなかった。日本は日米開戦後の確たる長期的展望のないままに、戦争に突入したのである。』
コロナ対策「勝負の3週間」「最後のチャンス」。政治家や有識者はこれまで、こうした表現で何度も新型コロナウイルスへの警鐘を鳴らし続けてきた。非常事態が半ば日常化した中で適用拡大された「まん延防止等重点措置」で街に緊張感は戻るのか。(出典:時事通信) =>結果、2021年5月時点で緊張感が戻ることはなかった。長期的展望のない、突発的な「呼び掛け」が続き緊張感も失われ、またコロナのまん延をとどめることができていない。

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